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アマゾンジャングル!マナウスーマルガリータ島走破記録(10)

souhaki

はじめに~「緑の大地を貫く赤絨毯の道」走破完結

8日間かけて走りぬく予定のマナウスからマルガリータ島に抜ける「緑の大地を貫く赤絨毯の道」、悲喜こもごもの物語りを体験しながらもうすぐマナウスに帰着できそうだというところまで前回書きました。

いよいよ終盤のラストスパート・・とはいかない道路事情ですが、再び「赤絨毯の道」へと走り出した愛車アミーゴと2人何とか頑張りぬいて無事マナウスにたどり着くまでの物語りが始まります。
今回の投稿で「緑の大地を貫く赤絨毯の道」マナウス~マルガリータ島往復の走破記録は完結となります。

 

マナウス安着に向けて・・牙をむく赤絨毯の道

美味しいパンでいっぱいにしたお腹を抱えて荷物を愛車に積み込んだ二人は、簡易宿泊所のおばさんとおやじさんに別れを告げて再び愛車アミーゴを転がし始めた、時刻は既に8時をまわっていた。

 

今日も天気はすこぶるよろしい、鼻歌交じりで運転する余裕が出てきているのは、もう少しでマナウスにつけるという安堵感の現われであろうと感じながら走り続けた。

しかし実際にはまだまだ先が長いわけでそう安心もしていられないのが現実であるが、!!

 

相変わらず景色は全く変わり映えがせず真っ青な空の下に広がる真緑のジャングルの中にひたすら延び続ける赤絨毯の道は、時には生きている大蛇のようないでたちも見せ付ける。

いけどもいけども赤土の土埃は留まる所をしらず、少しでも他の車の後ろにつこうものなら顔中が真っ赤なおしろいをつけたようになる事も稀ではない、それにも増して全く前方視界が遮られ、へたをすれば重大な事故に繋がるであろう事は容易に想像できた。

実際視界が確保できずに車を止めなければならないといった状況に何度か遭遇し、車を止めた事が一度や2度ではなかったのだ。

土埃による視界不良の状況は、後ろから来て我が愛車を追いぬいていく事で起こるのであるが、それにしてもこんな悪い道を良くもまああれ程のスピードで飛ばしていけるものだと感心をしたものである。

この赤絨毯の道は晴れていれば土埃、しかし一旦降雨によって土が湿ればその状態は豹変するのである。

その恐ろしさは後に身をもって体験することになるのだが・・・

 

まもなくして先のほうに分岐点が見えてきた。しばらくぶりに見る分岐点である。

運転をしていた僕は、何のためらいもなく真っ直ぐに伸びた赤い道の方を選んで左側にはいっていった。
すると助手席から突然相棒が声をかけてきた、この分岐は右にいくのが正解というのである。

正直に言うと方向音痴のきらいがある僕ははっきりいって全く自信がなかった、したがって右に軌道修正をし、進んだその先の処に遭ったガソリンスタンドでガソリンを補給しながらスタンドのおやじさんに聞いてみた。

案の定マナウスにいくための正解の道は、右側に曲がるようにして入り込んでいたこの道が正解だったのである。

それにしてもあのまま気がつかずに走っていたら、全く違った方向に延々と走り続け、何処まで行ってしまったのだろうと冷や汗の出る感覚を覚えた。

 

ガソリンの補給も終わり渇いた喉も潤いを取り戻し、気も取り直して意気揚々と車を走らせた。

車のスピードは相変わらず40km前後、飛ばしたくても飛ばせない状況が続く。

 

 

インディオ居住区に入る

この辺はジャングルを焼き払って牛などを放牧している牧場が目立つ、それにしてもいつ見てもやせこけた牛達である。
ブラジルの牛肉は筋が硬くて食べにくい印象が強かったが、此処の状況を見た時思わずジャングルを駆け回っている牛達では筋が多くなっても仕方がないのかな~などと余計な事を考えたりもしていた。

 

この先にインディオ居住区に入る処の管理事務所がある。

実は往路の記録の中で触れていなかったが、往路の通行時に当然インディオ居住区に入るための手続きが必要で管理事務所に入った我々はドキュメントのチェックを受け、我がサインを残してインディオ居住区に入ったのだ。
ブラジルでは先住民であるインディオの保護政策をとっており、ブラジル全土では未だ50以上と言われる程のインディオの種族が保護されていると聞く。

先住民であるインディオに対しては外部からの細菌などの持ち込みも厳しく管理されているのだ。
日本のイメージでいえば貴重品種の山野草の保護などのように。

従ってまた帰りもややっこしい事をいわれるのかと思っていると、何のチェックもなしでそのままインディオ居住区に入ることができた。

ここはインディオの生活が保証されているという事であるが、やっぱり実態は良く分からない。

居住区の中に入っていくと、まもなく大きな川にかけられたコンクリート製の橋に出会う。
珍しくコンクリートの橋が架けられていたこの川を、橋の上から覗き込んで見ると、跳ねるは跳ねるはで向うのほうで”ぱちゃん”こちらのほうで”ぼちゃんと繰り返し、群れを成して泳いでいるのだ。

大きな魚の群れは、まるで養魚場の水槽の中で泳ぐ魚たちのように、擦れ合いぶつかり合いながら泳いでるのである。
普通の川の中でこのように泳ぐ魚の姿は今までの記憶で見たことがない景色であった。

 

だが注意しなければならないのはここはインディオ居住区の中であるという事である。

後で聞いた話であるがここに分け入って魚を捕っていた旅行者が裸にされて橋の上に転がされていた話は記憶に新しい。

当然死体で!!

その時は魚釣に興味を持っていなかった事がとても幸せだった気がした。

なぜならば釣が大好きであったら当然釣道具ももっていっただろうし、川があれば釣りもしたくなっていただろう事は想像に堅くなく、このような景色に遭遇すればいくら時間がないといっても、針をおろして様子を見ただろうと思うと将来はなかったかもしれないからである。

 

それにしても往路ではこの辺は朝日を浴び、蝶々の乱舞を眺め、インディオの歩く姿に興味を示しながら走り去ったため時間の長さを気にしなかった。

今帰り道で日も傾き始めた頃ではチョットもの寂しさも加わって時間の長さが気になる。

要は早くマナウスに着きたいという気持ちが、逆に時間の長さを感じさせている気がした。

一方で少しづつこの道路の怖さが分かり始めて、心の焦りのようなものが現われ始めていたような気がするのであった。

 

 

新たなる事件が・・・

我が愛車もわがままを言う事もなくここまでたどり着いた、我々も特にトラブルもなくここまでの所は順調であった。

そうここまでの所は、だがここで問題が一つおきた。

ガソリンスタンドがまたあったので補給をするべく寄ったのだが、車が入るなり駆け寄ってきた店番のおばさんが”ガソリンはないよ”というのである。

これにはショックであった。

ガソリンは原則としてスタンドがある所ではすべて補給をしておくというのが絶対であるが、其の補給すべきスタンドでガソリンがないといわれれば残念ながら従うしかない。

ここで文句を言ってもしょうがない事であり、ガソリンメーターを覗けば取敢えずメーターの目盛りは約半分、何とか行っていけない距離ではない。

腹を決めて次のスタンドまでいっきに走らせる事にした。

それにしてもショックは隠せない。

 

未だメーターの針が半分程度にある時は良かったが、時間が経つに連れてこの心細さが益々助長されていく事になったのである。

ガソリンスタンドから次のスタンドまで凡そ100㎞ 、我が愛車のタンク容量が約50リットルくらいでリッター6-7kmだったから20リットルあれば充分に走れるはずである。

然しながらメーターで4分の1くらいになるまではまだまだ気持ちに余裕もあったのだが、メーターが4分の1を割り始めると実際にどれくらいの距離を走ったのかもわからず、車の距離メーターは大きなタイヤのお陰であまりあてにできないレベルに成っている事は間違いなく、また道路にある距離を示す標識も整備されていないから、実際の所はどれくらい残りがあるのか、ほとんど見当がつかなかったのである。

 

これには2人とも真っ青で、もう其の後はメーターの針と道路のにらめっこ、あの坂を登れば正面にプレジデントフェゲレードの町が見えるはずだとか、あのコーナーを曲がればもうすぐだ、、、などといいながら、だんだん冷や汗に似たものさえ感じるように成ってきたのである。

 

実際の所道路は大きな上下のうねりを幾つも繰り返しており、一つの坂を登るとはるか正面に同じ景色が続き、またそれをクリヤーすれば次の坂が見えるといったようにプレジデントフェゲレードに着くまでは5-6回繰り返し、其の後に一つの大きなコーナーをクリヤーしてやっと本当に町の灯りが見えてきたのである。

もうまわりはほとんど日が落ちて暗くなっており、其のちょっと前迄はビデオ撮影などをしながら気を紛らわしていたものだが、さすがに日が落ちると物も言わずに燃料計とにらめっこの時間が続いていた。

町の灯りが目に入ったこの時ほど無心で喜べた時はなかった。

 

やっとほっとしておもむろにガソリンスタンドへはいりガソリンの給油満タンと頼んだ。

ガソリンを入れながら今までの事をおやじさんにいって聞かせるとおやじさんは、この街道では良くある話だから予備タンクが是非必要だと説教めいて語ってくれた。

予備タンクももたずにこんな旅を計画するほうが、無謀な話なんであろうとその時改めて感じさせられた次第である。

 

これでタイヤ、ガソリンの予備の必要性を充分思い知らされた事に成ったが、それにしても満足に用意もしていなかった状態でよくも無事に帰ってこられらたものだと内心は喜んでいた。

 

ガソリンを入れてから近くのレストランで夕飯を食べようと考えていたが、この町の様子は最初に書いたように、赤土の埃で町中が真っ赤かの状態、レストランでも食べられる所はないだろうと後2-3時間マナウスまで夕食はおあ付けとなった次第である。

今は未だ夕方の6時ちょっとすぎたところであり我慢できない時間でもないと自分に言い聞かせた。

 

再び愛車のエンジンを吹かしマナウスに向けてハンドルを切った。

ここからマナウスまでようやく100㎞程になった処である。

 

順調にいけば3時間程度でマナウスに着ける、と車を飛ばして??いると正面に水溜まりができていた。

そうかこの1週間強の間にこの辺では雨が降ったのである。

往路ではこんなコンディションは一度も出会わなかったが、帰りまでの間に雨が降ったお陰であの赤土が悪魔の土と化したのである。

実際にこの赤土が水に濡れるととんでもなく摩擦係数が減少する。

雪道の摩擦係数など問題に成らないほど低下するのである。

 

それはどういうことかと言えばいくら大きなブロックパターンがあるタイヤでも、其のブロックをすべて包み込んでまっ平らな鏡面仕上げのような状態が、タイヤの廻りにできてしまうのである。

その鏡面仕上げのようになった粘土質の赤土が、濡れている状態ではもうどうしようもなくブレーキを踏まなくても滑り出す事が簡単に起こるのである。

 

 

牙をむく赤絨毯の道

一度目の水溜まりは難なく乗り越えた。

往路では全く濡れ環境がなかったのだが、復路では同じ道に深さ30~50㎝もありそうな溝が道いっぱいに広がっているのであった。

2度3度と同じような水溜まりを超えていく、さすがに4WDと大きなタイヤの組み合わせは強いとこの時は感じていた。

 

次の水溜まりも難なく抜けて、其の先にいくと11トンの大型トラックが後ろのタイヤを水溜まりの溝に食われ、前にも後ろにもいけず立ち往生している。

道をいっぱいにふさいでいるものだから他の車が通れない、我々の前に乗用車が一台いたが諦めの様子、我々も観念するしかないかと思ったが道の両端をよく見るとチョット小高くなっている。

木々を切り倒して傾斜をつけている部分が約幅2mくらいでちょうどトラックをパスできるように成っている事に気がついた。

”よし あそこをクリヤーしよう!”と相棒が言った。

相棒は自ら其の場所にいき下見をして充分可能である事を確認した、しかし実はそこを抜けてトラックの向こう側に下りる所が約10m近い水溜まりに成っていることも確認できた。

当然そこはつるつるの赤土状態だから途中で止まる事は許されなかった、万が一途中で止まる事に成ればそこから脱出する事は非常に難しくなると予想されたからである。

 

いよいよ実践するために愛車に乗り込み運転を再開、ゆっくりと道路の左端に向かい道を外れ道路端の”のり面”の部分から、目的の場所に乗り入れるてみたなかなか良い感じである。

ゆっくりと進みながらいよいよのり面を下りる所である、ここからは水の中ではあるがアクセルを踏んで推進力を確保しておかないとエンストを起こした場合、再起不能になるとの判断からアクセルを踏みながら水溜まりの中に恐る恐るはいって行った。
タイヤが大きいから水に浸かる恐れはないが、タイヤが跳ね上げた泥水がフロントガラスにもかかってくる。
前が見えなくなると、一瞬エンジンが止まりそうに成るのを感じて慌ててアクセルを踏み込んだ。

 

いっきにみずしぶきを上げて向こう側に抜け出た。やったという感じで満足感が一杯、そのまま意気揚々と立ち往生のトラックを尻目にみて再び走り始めた。

あのトラックには申し訳ないが、我々が残っていても何も手伝う事ができない状態であったからと言い訳しながら走り抜けたのである。

 

ただ雨に濡れた赤土の道はいろいろな所で其の牙を剥いてくる。

おりしもさしかかった工事中の坂道、緩い坂道ではあるが工事中で奇麗にならされた赤土は、その上を転がるタイヤにも奇麗に土を貼り付けていき、あの大きなタイヤの5cmもあろうかというブロックパターンの隙間をすべて埋めて更に3cmくらいの土を積み上げ、ブロックタイヤを大型のスリックタイヤにしてしまったのである。

この結果我が愛車はどうなったかといえば、何をすねたのかご主人様の指示を聞かずに勝手に滑り出すありさまで、車はブレーキも踏まないのに斜めに滑り出していたのである。

また悪い事にこの道はかまぼこ状に成っていて其の左右はガードレールなど何もなし、その下は両側とも30mくらいありそうな断崖絶壁である。

落ちれば一貫の終わりなのである。

 

最初は何とか右に左にハンドルを修正しながら下っていたが、そのうち軌道修正ができない状態に成り、恐ろしくなって取敢えず車を止めた。

車を降りてタイヤを見てみると案の定前に説明した通りブロックを赤土で埋めた大径のスリックタイヤ状態になっていた。

 

思わずもうこれ以上僕の運転では心もとないと相棒に運転をお願いした。

さすがに現地在住の彼は慣れているというか、何とか坂下の安全な所まで車を運んでくれた。

さすがにこの後も引き続き運転をお願いし、一路マナウスまで向かう事にした。

それにしても濡れた赤土の恐ろしさがこれほどの物とは、到底理解できていなかったのである。

 

 

マナウスの灯が見えた

こんな騒動をしてやっと落ち着いて走れるように成りもうまわりは真っ暗となっていたが、ひたすら走り続けていたら突然舗装の道が始まった。

我々が旅を続けている間にも工事は進んでいたようで、舗装の区間がちょっと長くなっていたのである。

舗装に成ったのを喜んだ頃からちらほらと灯りが所々に見え始め、大きなコーナーを廻ってジャングルが切れたら正面に明かりの束が目に入ってきた。

そうマナウスの灯かりなのである。

ついに往復4000㎞のアドヴェンチャードライブは出発の地マナウスに無事着いて完結するのだ。

その時が刻一刻と近づいてくる、今までの疲れがどっと出てきそうだが、そんな事を感じている心のゆとりなどないのである。

うれしい、やっと無事に帰りつけた。

出かけた時は軽い気持ちで出かけていってしまったが、途中から本当にマナウスに無事で戻る事が絶対条件と言い聞かせていた。

 

それがもうすぐなのである目の前に検問所が見えてきた、時刻は夜8時をわずかにまわった頃だった。

検問所をパスして武田農場を横目にマナウス市街にはいっていく。

このマナウスの灯かりが妙に目新しく感じた。

懐かしい感じだった。

ちょっぴりではあったが冒険者の気持ちを理解できたような気分になった。

もうマナウスに着いたのである。
安堵感と達成感と満足感が一度に襲ってきた感じで武者震いを感じた。

 

マナウスに着いて結局相棒のお宅で夕食をいただき腹が満足した所で我が家に帰り、旅の垢と疲れを取るためシャワーを浴びて眠りに就いた。

 

あとがき

夢に見たブラジルマナウスから緑の大地のアマゾンジャングルを抜け、ヴェネズエラのマルガリータ島までの往復4000㎞のロングドライブが、当初の予定にやや遅れはあったものの無事マナウスに到着し、完結することができたのだ。

相棒と2人のみ、何のサポートも無しのある意味無謀なチャレンジであったが、初期の目的を達成できたことはこの上ない喜びである事改めて感じた次第である。

 

 

 

長々とお読みいただきましてありがとうございました。

 

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