はじめに
いよいよこの旅も明日の朝には6日目に突入、計画通りに進んでおり残り時間も少なくなってきた。
第一はまず無事にマナウスまで戻ることでこれ以外の何物でもないのである。
我々は冒険家ではなく、にわかチャレンジャーなので生活を犠牲にしてチャレンジを続けるわけにはいかないというジレンマがある。
一度通った道ではあるが、特に時間経過とともに刻々と変化してしまうアマゾンの道は一度通ったからと言って安心していられるような状況ではないことは肝に銘じていた。
残り2日間を無事故でマナウスに戻り切るために・・・
いよいよ本格的な帰路に・・プエルトラクルスに別れを告げて
タイヤのパンク修理も無事に終えてプエルトラクルスの街並みを見ながら車は快調に走り出した。
本心はここプエルトラクルスの奇麗な街を散策して旅の思い出作りをしたかったのだが、何しろ時間との戦いでもあった。
少しでも余裕を造れるところでは時間的余裕を作っておかなければならないという焦りから、散策も断念して車を走らせることに徹したのである。
本日の目的地は往路でも宿泊地としたプエルトオルダスのホテル、往路の道をなぞるようにプエルトオルダスに向けてひたすら走るのみなのだ。
この辺の景色は特に代わり映えもしないので、往路と同じ景色を見ながらの走行となる、厳密にいえば景色も逆方向からの視点になるので変化があるはずなのだが、細かいところは記憶に残っていないこともありあまり変化を感じられないというのが正直なところであった。
車も気分も快調に走れる事は何にも増してうれしい限りである。
プエルトオルダス到着
快調に走り続けほぼ予定通りにプエルトオルダスのホテルに到着した。
ホテルは往路に宿泊した同じホテルにしていた為、3日や4日で何事か変るわけでもなく残念ながら特筆すべき事に出会わなかったのである。
夕飯はやはりおいしいスペイン料理が良いという事になり、チェックインを済ませた我々は荷物をホテルにおいてホテル周辺の散策を始めた。
まもなくして見つけたこぎれいなスペイン料理のレストランにて食事をする事にした。
注文して出てきたビールはやっぱりポラール、この頃になるとポラールの味もまんざらではなくなるから不思議で人間のいい加減さを思い知った感じである。
料理は海鮮物のサラダ、スパゲッティも美味しかったが、ピザもなかなか美味しかった。
レストランを出るとこの辺は居酒屋のようなものが見当たらない。
よく探せばあるのだろうが一晩だけでは其の元気もなくホテルに帰って寝る事にした。
プエルトオルダスを離れて検問所へ
マナウスを出てから6日目の朝ほぼ予定通りにプエルトオルダスのホテルを出発、ここから又同じ景色を見ながら走り続けなければならないことに変わりはなかったのだ。
プエルトオルダスの街並みが遠ざかっていき代り映えのしない平坦な景色に代わってきた。
この先暫く行くとカナイマ公園を含む峠越えの道に入っていくことになるはずある。
平坦な景色の中を進んでいくと復路では最初の検問所が現れた。
ここの検問所は往路の最後の検問所(同じ道なので当然だが)で、行く時には何も言わず通してくれたのだが、何故か今回はちょっと様子が異なる。
例によって機関銃を肩から下げた兵士が複数人寄ってきてその中の一人が車を脇に寄せなさいという。
一瞬たじろいだが別に後ろめたい事があるわけでもなく車を検問所脇の端に止めた後ドキュメントの提示を求められ手渡すと目を通し始めた。
しかしどうも真剣に見ている様子もなくなんとなく眺めている感じ、これはと思いまだ残っていたチョコレートと菓子を手渡すと今までの様子が突然穏やかな表情になり世間話を始めるではないか。
奥のほうにいた兵隊も出てきて一緒になって話し始めたのだ、このまま付き合っているとどんどん時間が遅れそうなので、話を適当に切り早々に出発したが、それにしてもげんきんな兵士達であった。
出てくる前にヴェネズエラにはチョコレートを持っていった方がいいよといってくれた人がいた。
まさかそのようなことがと思いつつ検問所対応のチョコレートを用意してきたのだが今までは使う機会がなかったのだ。
現実に直面しやはり効果があるものなのだと驚いた。
田舎の牛肉煮込み料理
つかの間の兵士との雑談の後更に進み始めたのだが一向に景色は変る様子もなくひたすら走り続けた。
しばらく走るとをお互いの腹時計が昼時間が近づいている事を告げ始めていた。
時計を見れば既に午後の1時を回っていたのだ。
もう少し先に小さな部落がありそうなので取敢えずそこまで走る事にしてアクセルを踏んだ、暫くして部落らしき集落が見え始めた。
小さな町といった感じの集落で、路地を2つ3つ曲がった所の角に取敢えず食事ができそうなランショ風の店を見つけた。
おやじさんに何ができるかと聞くと牛肉の煮込んだやつがあってこれが美味いよという、そう言えば牛肉を煮込んだ料理というのはブラジル料理にもある。
大体味はそうは違わないだろうしそこそこいけるのも分かっていた。
それを頂戴と注文し出てくるまでの時間をビールを飲み雑談しながら待った。
店の前は道路である。
店はオープンスペースに成っているから前をとおる車や、歩いている人たちが何故か我々を興味ありげに見ていくように感じられる。
ふと気になって聞いてみると、「おまえ達は日本人か、それとも中国人か」という。
日本人だと応えると日本人を見るのは初めてだという。
この辺の田舎では日本人が通るなんてなかなかない事だろうから、見るのが始めてでも仕方ないんだろうなと思わず納得した。
暫くするとおやじさんが出来上がった牛肉の煮込みとご飯を持って出てきた。
とろとろに煮込まれた牛煮込み料理でご飯が進む、お腹が減っていたせいもあるがそれだけではないのだろう。
食べてみると素朴な田舎料理といった感じで美味しい、ブラジルの味付けに似ていて懐かしくも思えた。
腹をいっぱいにして再び車にのりこむ、さていろいろ狭い路地を廻ってきたらどこからもとの道路に戻れるのかわからなくなっていた。
先ほどの店から適当に走ってきたのだが行けば行くほど深みにはまっていきそうで、仕方なくスーパーらしき店先に立って話し込んでいた娘さん2人に声をかけて道を聞いた。
親切に指をさしながら丁寧に教えてくれた。
皆素朴で人が良さそうな人たちばかりである。
それにしてもあの娘達が最後に見せたあの笑顔はとてもいい笑顔で大いに癒された。
カナイマ公園峠越え~グランドサヴァンナへ
丁寧に教えてもらったことで無事に車は元の道に戻る事ができた。
暫く走ると車はカナイマ国立公園のある小高い山岳道路に入ってきた、途中では豪快な滝の雄姿も見ることができた。
そしてこの峠越えをすると、再びただ広いだけの大草原の中の一本道になる、グランドサヴァンナへの突入だ。
グランドサヴァンナの中の直線道路を気持ちよく走行していると、遥か前方ににまた検問所が見えてきた。
相棒は助手席でムービーを動かし、周辺の風景を収めていたのだ。
ムービーを止めた方がいいかどうか悩んだが、まあ大丈夫だろうとそのまま検問所に進行した。
すると中から複数の兵士が出てきたがその中の検査官がなんと往路の検問の際、ドキュメントを食い入るように見つめていたインテリだったのだ。
そうここの検問所はあのインテリの検問所だったのである。
すぐさま其のインテリ検査官は、相棒に向かって今おまえ達は撮影をしていただろうという。
よく聞けば遥か前から既に我々の行動は望遠鏡の目の中に入っていたのである。
したがって車のなかから撮影をしながら走ってきた事も彼らにはすでに知られていたのであった。
これで待ち構えられて銃口でも向けられていたらと思ったら生きた心地がしなかったであろう。
インテリ曰くちょっと覗かせろという、何も写っていないただの草原が写っているだけだと説明するも納得してもらえず、覗いてみてくれと渡すと暫く見た後、相棒に対し巻き戻してそこにある池でも撮って前の記録を消すように指示してきた。
これには従わないわけには行かず、仕方なく20分程度池の景色だけを撮り続けたのである。
それにしても背後には数人の兵士が、機関銃を持って控えているわけでやはりいい気持ちはしないものである。
記録を抹消し終わって我々も開放された。
それにしても軍事設備があるわけでもないのだが、この緊迫は何なのだろうと思わずにはいられなかった。
まあ無事解放された事を喜びつつ、再び大草原の一本道で気持ちのよい走りを楽しみながら疾走しつづけたのである。
この先100㎞も走れば、またブラジルに入るのである、ブラジルへの思いを胸に気持ちのよい走りはまだまだ続くのである。
まずは次のボアビスタまで、、、、、、
あとがき
マルガリータ島上陸を果たして帰路に就いた我々であるが、現時点未だブラジル入りを果たせていない状況で国境まで凡そ100㎞程度残している。
国境からマナウスまでは約700㎞位の距離があることを考えればまだまだ長い道のりであり、ジャングルでは凡そ530㎞程が未舗装区間であることを考慮しなければならず、1日で走破することは難しい状況になってきている。
当初の計画では7日間での走破を考えていたが、状況から判断すると道中のどこかで更に一泊も考えなと行けない状況となっていた。
なんとしても8日以内にはマナウスに戻らなければならないというプレッシャーを抱えながらひたすら走り続けている。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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