【回想録】アマゾンジャングル走破記(8)
帰路の物語り
いよいよ6日目になって、この度の残り時間も少なくなってきた。
第一はまず無事にマナウスまで戻ること、これ以外の何物でもないのである。
我々は冒険家ではなく、にわかチャレンジャーなので生活を犠牲にしてチャレンジを続けるわけにはいかないというジレンマがある。
一度通った道ではあるが、特に時間経過とともに刻々と変化してしまうアマゾンの道は一度通ったからと言って安心していられるような状況ではないことは肝に銘じていた。
残り2日間を無事故でマナウスに戻り切るために・・・
いよいよ本格的な帰路に
プエルトラクルスに別れを告げて
タイヤのパンク修理も無事に終えて、プエルトラクルスの街並みを見ながら車は快調に走り出した。
本心はここプエルトラクルスの奇麗な街を散策して、旅の思い出作りをしたかったのだが、何しろ時間との戦いでもあり、少しでも余裕を造れるところでは、時間的余裕を作っておかなければならないという焦りから、散策も断念して車を走らせることに徹したのである。
本日の目的地は往路でも宿泊地としたプエルトオルダスのホテル、往路の道をなぞるようにプエルトオルダスに向けてひたすら走るのみなのだ。
この辺の景色は特に代わり映えもしないので、往路と同じ景色を見ながらの走行となる、厳密にいえば景色も逆方向からの視点になるので変化があるはずなのだが、細かいところは記憶に残っていないこともありあまり変化を感じられないというのが正直なところであった。
車も気分も快調に走れる事は何にも増してうれしい限りである。
プエルトオルダス到着
快調に走り続けほぼ予定通りにプエルトオルダスのホテルに到着した。
ホテルは往路に宿泊した同じホテルにしていた為、3日や4日で何事か変るわけでもなく残念ながら特筆すべき事に出会わなかったのである。
夕飯はやはりおいしいスペイン料理が良いという事になり、チェックインを済ませた我々は荷物をホテルにおいてホテル周辺の散策を始めた、まもなくして見つけたこぎれいなスペイン料理のレストランにて食事をする事にした。
注文して出てきたビールはやっぱりポラール、この頃になるとポラールの味もまんざらではなくなるから不思議で、人間のいい加減さを思い知った感じである。
料理は海鮮物のサラダ、スパゲッティも美味しかったが、ピザもなかなか美味しかった。
レストランを出るとこの辺は居酒屋のようなものが見当たらない。よく探せばあるのだろうが、一晩だけでは其の元気もなくホテルに帰って寝る事にした。
プエルトオルダスを離れて検問所へ
マナウスを出てから6日目の朝、ほぼ予定通りにプエルトオルダスのホテルを出発、ここから又同じ景色を見ながら、走り続けなければならないことに変わりはなかったのだ。
プエルトオルダスの街並みが遠ざかっていき、代り映えのしない平坦な景色に代わってきた、この先暫く行くとカナイマ公園を含む峠越えの道に入っていくことになるはずある。
平坦な景色の中を進んでいくと復路では最初の検問所が現れた、ここの検問所は往路の最後の検問所(同じ道なので当然だが)で、行く時には何も言わず通してくれたのだが、何故か今回はちょっと様子が異なる。
例によって機関銃を肩から下げた兵士が複数人寄ってきて、その中の一人が車を脇に寄せなさいという。
一瞬たじろいだが、別に後ろめたい事があるわけでもなく車を検問所脇の端に止めた、一応ドキュメントの提示を求められ手渡すと目を通し始めた。
しかしどうも真剣に見ている様子もなくなんとなく眺めている感じ、これはと思いまだ残っていたチョコレートと菓子を手渡すと今までの様子が突然穏やかな表情になり世間話を始めるではないか。
奥のほうにいた兵隊も出てきて一緒になって話し始めたのだ、このまま付き合っているとどんどん時間が遅れそうなので、話を適当に切りそうそうに出発したが、それにしてもげんきんな兵士達であった。
出てくる前にヴェネズエラにはチョコレートを持っていった方がいいよといってくれた人がいて、それを真に受けて検問所対応のチョコレートを用意してきたのだが、今までは使う機会がなかったので、そんな事がと思っていたが多少の効果はあるようだ。
田舎の牛肉煮込み料理
つかの間の兵士との懇談の後、更に進み始めたのだが一向に景色は変る様子もなく、ひたすら走り続けているわけだが、昼時間が近づいている事を腹時計が告げ始めていた。
時計を見れば既に午後の1時を回っていたのだ。
もう少し先に小さな部落がありそうなので取敢えず、そこまで走る事にしてアクセルを踏んだが、まもなく部落らしき集落が見え始めた。
小さな町といった感じの集落で、路地を2つ3つ曲がった所の角に取敢えず食事ができそうなランショ風の店を見つけた。おやじさんに何ができるかと聞くと、牛肉の煮込んだやつがあってこれが美味いよという、そう言えば牛肉を煮込んだ料理というのはブラジル料理にもある。
大体味はそうは違わないだろうし、そこそこいけるのも分かっていたから、それを頂戴と注文し出てくるまでの時間を、ビールを飲み、雑談しながら待った。
店の前は道路である。店はオープンスペースに成っているから、前をとおる車や、歩いている人たちが何故か我々を興味ありげに見ていくように感じられる。
ふと気になって聞いてみると、「おまえ達は日本人か、それとも中国人か」という。
日本人だと応えると日本人を見るのは初めてだという。
この辺の田舎では、日本人が通るなんてなかなかない事だろうから、見るのが始めてでも仕方ないんだろうなと思わず納得した。
暫くするとおやじさんが出来上がった牛肉の煮込みとご飯を持って出てきた。
とろとろに煮込まれた牛煮込み料理でご飯が進む、お腹が減っていたせいもあるが、それだけではないのだろう。
食べてみると素朴な田舎料理といった感じで美味しい、ブラジルの味付けに似ていて懐かしくも思えた。
腹をいっぱいにして、再び車にのりこむ、さていろいろ狭い路地を廻ってきたら、どこからもとの道路に戻れるのかわからなくなっていた。
先ほどの店から適当に走ってきたのだが、行けば行くほど深みにはまっていきそうで、仕方なくスーパーらしき店先に立って話し込んでいた娘さん2人に声をかけて、道を聞いた。親切そうに指をさしながら丁寧に教えてくれた。
皆素朴で人が良さそうな人たちばかりである。
それにしてもあの娘達が最後に見せたあの笑顔はとてもいい笑顔で大いに癒された。
カナイマ公園峠越え~グランドサヴァンナへ
丁寧に教えてもらったことで無事に車は元の道に戻る事ができた。
暫く走ると車はカナイマ国立公園のある小高い山岳道路に入ってきた、途中では豪快な滝の雄姿を見ることができた。
そしてこの峠越えをすると、再びただ広いだけの大草原の中の一本道になる、グランドサヴァンナへの突入だ。
グランドサヴァンナの中の直線道路を気持ちよく走行していると、遥か前方ににまた検問所が見えてきた。
相棒は助手席でムービーを動かし、周辺の風景を収めていたのだ。
ムービーを止めた方がいいかどうか悩んだが、まあ大丈夫だろうとそのまま検問所に進行した。
すると中から複数の兵士が出てきたが、その中の検査官がなんと往路の検問の際、ドキュメントを食い入るように見つめていたインテリだったのだ。そうここの検問所はあのインテリの検問所だったのである。
すぐさま其のインテリ検査官は、相棒に向かって今おまえ達は撮影をしていただろうという。
よく聞けば遥か前から既に我々の行動は望遠鏡の目の中に入っていたのである。
したがって車のなかから撮影をしながら走ってきた事も彼らにはすでに知られていたのであった。
これで待ち構えられて銃口でも向けられていたらと思ったら生きた心地がしなかったであろう。
インテリ曰く、ちょっと覗かせろという、何も写っていない、ただの草原が写っているだけだといったが納得してもらえず、覗かせてやると、暫く見ていたが、相棒に対し巻き戻して、そこにある池でも撮って前の記録を消すように指示した。
これには従わないわけには行かず、仕方なく20分程度池の景色だけを撮り続けたのである。
それにしても背後には数人の兵士が、機関銃を持って控えているわけで、やはりいい気持ちはしないものである。
記録を抹消し終わって我々も開放された。それにしても軍事設備があるわけでもないのだが、この緊迫は何なのだろうと思わずにはいられなかった。
まあ無事解放された事を喜びつつ、再び大草原の一本道で気持ちのよい走りを楽しみながら疾走しつづけたのである。
この先100㎞も走れば、またブラジルに入るのである、ブラジルへの思いを胸に気持ちのよい走りはまだまだ続くのである。まずは次のボアビスタまで、、、、、、
あとがき
マルガリータ島上陸を果たして帰路に就いた我々であるが、現時点未だブラジル入りを果たせていない状況で、国境まで凡そ100㎞程度残している。
国境からマナウスまでは700㎞位の距離があることを考えれば、まだまだ長い道のりであり、ジャングルでは凡そ530㎞程が未舗装区間であることを考慮しなければならず、1日で走破することは難しい状況になってきている。
当初の計画では7日間での走破を考えていたが、状況から判断すると道中のどこかで更に一泊も考えなと行けない状況で進んでいるようなので、この先の展開が楽しみでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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